台風19号VS城山ダム!水位を理解して河野大臣ブログを読み解こう

津久井湖 城山ダム(台風以前) 注意や備えなどの話題
津久井湖 城山ダム(台風以前)

河野太郎大臣がブログで「ダムの管理について」という記事を書かれていました。台風19号の記録的大雨で緊急放流した、相模川水系の城山ダムの対応について書かれた記事でした。

なにやらいろいろ対応したことは分かるのですが素人には難しい内容、これを読み解くにはダムの知識が必要そう・・・。ということでダムについて調べてみたので紹介します。

ダムの基礎知識を理解したうえで、一緒に河野太郎大臣のブログを読み解いていきましょう!

城山ダムとは?

一級河川 相模川 城山ダム
一級河川 相模川 城山ダム

城山ダムは相模川の下流である相模原市城山町に位置し、昭和36年に工事が始まり昭和40年に完成した、洪水調節、利水補給、発電の機能を併せ持つ多目的ダムです。

この詳細については神奈川県のページ「水資源の開発(相模川総合開発事業)」に掲載されています。

城山ダムの水位

この中で掲載されている下図(城山ダム容量配分)の理解が、河野太郎大臣のブログを読み解く上で必要になるので図中の用語を解説していきます。

城山ダム容量配分 (神奈川県:水資源の開発(相模川総合開発事業)より)
城山ダム容量配分 (神奈川県:水資源の開発(相模川総合開発事業)より)

城山ダムのいちばん底

まず、ダムは水を貯める施設ですから、水が貯まり始める一番底面があります。

この、ダムの一番底が標高何メートルにあるかを表すのが「河床高(かしょうだか)」です。城山ダムの場合は、河床高が72mとなっています。

ただし、ダムには次第に土砂が堆積していくので、底面が埋まっていきます。

土砂が堆積した程度でダムの機能が損なわれては使い物になりませんから、堆砂容量(たいさようりょう)という100年くらいかけてどれほど土砂が堆積するかを織り込んだ設計になっています。

城山ダムの場合、河床高に堆砂容量を加えた標高95mがダムの底とみなすことができます。

城山ダムの水底
城山ダムの水底

さて、ダム底がわかったところで、ダムがどれだけ水を貯めることができるかという水位について考えていきます。

城山ダムの最低水位

城山ダムは飲み水などといった利水利用にも使われるため、最低113mの水位を保っておく必要があります。

城山ダムの利水を考慮した最低水位は113メートル
城山ダムの利水を考慮した最低水位は113メートル

ダムの底が標高95mなので、18m水が貯まっている水位です。この水位が最低水位です。台風が近づいていたとしても、事前通達なしに最低水位を下回ることは無いのだそうです。

城山ダムが平常時に貯められる水量

平常時の最高水位は、非洪水期(10/1〜6/31)と洪水期(7/1〜9/30)で異なります。これは急な洪水時にダムが耐えられる様に、天気が安定しなく洪水などが起こり易い夏期は水位に余裕を持たせる目的で水位が決められているためです。

城山ダムの場合、非洪水期の最高水位(常時満水位:じょうじまんすいい)は124m、洪水期の最高水位(洪水期制限水位:ひこうずいきせいげんすいい)は120mとなっています。

城山ダムの最大水位
城山ダムの最大水位

城山ダムが洪水発生時に貯められる水量

そして、万一の洪水発生時には、一時的な貯留を目的に最高水位を超える水位が設定されていて、この洪水調整のための最高水位がサーチャージ水位です。

城山ダムの場合は、サーチャージ水位は125.5mとなっています。

城山ダムのサーチャージ水位は125.5メートル
城山ダムのサーチャージ水位は125.5メートル

河野太郎の大臣のブログ「ダムの管理について」を読む!

さて、ここまでの内容を抑えていれば、河野太郎大臣のブログ「ダムの管理について」が理解できる様になります。

台風19号接近直前の貯水量は少なめの117.5m

冒頭から「台風19号の接近直前の城山ダムの水位は117.5mでした」というところまでは、さきほどの説明で問題ないと思います。

台風19号接近前は水位117.5メートルでした
台風19号接近前は水位117.5メートルでした

台風19号との決戦に備えて最低水位まで下げた

普段なら洪水期制限水位の120mよりも2.5m少ないので余力ありの状態だったわけですが、相手は特大の台風19号と戦うために城山ダムは予備放流(洪水に備えた放流アップ)を行って113mまで水位を下げたのでした。

城山ダムの利水を考慮した最低水位は113メートル
城山ダムの利水を考慮した最低水位は113メートル

城山ダムの最低水位が113mなので、通常利用の限界ぎりぎりまで水位を下げて台風を迎え撃つ準備に入ったというわけですね。

決戦!台風19号 VS 城山ダム

台風が上陸し勢いを増すと、城山ダムの放流量を上回る量の流入が続き、ダムの水位はどんどんと増していくのでした。

このまま放流量を上回る量の流入が続くとサーチャージ水位(洪水時満水位)を超えてしまうということで、城山ダムは緊急放流を計画しました。近隣住民の避難行動やダム水位の上昇具合などを考慮しながら試行錯誤しながら緊急放流を実施したのでした。

このあたりの話しは「NEWSポストセブンの掲載されていた図(記事は下で紹介)」が参考になります。

台風19号による城山ダムの洪水調整図(NEWSポストセブン:「城山ダム緊急放流」舞台裏 担当者が振り返る緊迫の1日より)
台風19号による城山ダムの洪水調整図(NEWSポストセブン:「城山ダム緊急放流」舞台裏 担当者が振り返る緊迫の1日より)

城山ダムのサーチャージ水位は125.5m、上限ぎりぎりの戦いが続いたことがわかります。

下流を無事に氾濫・決壊から守ることができました。

戦いを終えた城山ダムの勇士がこちらです。HIDE channelさんの動画です。

台風19号翌日の城山ダム緊急放流と津久井湖~The day after the big typhoon in Japan.

この動画と、台風19号上陸以前の2019年8月4日に私が撮影してきた写真と比較すると、台風19号が残した爪痕が実感できると思います。

晴れた日の城山ダム(台風以前)
晴れた日の城山ダム(台風以前)
晴れた日の城山ダムと津久井湖(台風以前)
晴れた日の城山ダムと津久井湖(台風以前)
台風以前の2019年8月4日晴天時の津久井湖水位
台風以前の2019年8月4日晴天時の津久井湖水位

台風19号VS城山ダムの舞台裏がわかる記事

ここまで理解できる様になったら、以下の記事を読むと台風19号とダム関係者の激しい攻防戦の様子も頭に描けると思います。

「城山ダム緊急放流」舞台裏 担当者が振り返る緊迫の1日(NEWSポストセブン)

ダムに関する書籍も数多く発売されていますので、今回の一件でダムに興味を持った方は読んでみるのも面白いかもしれません。実際に城山ダムへ足を運んでも楽しいですよ!

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