自他共に認める醜い顔を持った主人公、田淵和子の物語「モンスター」。
興味深く読んだものの、面白いかというと、ストレートにそうも言えないというのが読後の感想です。
田淵和子は、自分の容姿の醜さに、そしてそのせいで受ける周りからの不当な扱いに長年苦しめられ、社会人となったある日整形をする。
簡単な目の整形手術から始まり、徐々に難しい大がかりなものまで発展していき、最終的には歯を抜いて差し替えたり骨も削ったり、原型をとどめない程に整形を繰り返す。
その中で心もどんどん変化していき、恋愛では腹黒いと思えるような駆け引きをしたり、かつての恨みを晴らすように若かりし頃の知り合いに陰湿な復讐をしていく。
しかし、ずっと恋い焦がれていた英介に再会し想い合えたと思ったときに湧き上がってきたのは、「美人になったから愛されたのか…」という思い。
英介はそれを否定したけれど、他の男性と同じようにただ美人を抱きたいだけなのではないか、という思いに心を揺さぶられる中、和子(訳あってこの場面では鈴原未帆に名前が変わっている)は持病が悪化して命を落とした。
しかし、最期の瞬間は英介と共に過ごした。
本当の自分を英介に打ち明け、それでも愛されていることを確認して和子は逝った。
英介の本心は、読者が想像するしかないような終わりですが…私は怪しいものだと思いましたね…
この物語では、終止女は見た目が大事ということが言われています。
途中うんざりしたくらい。
それでもたしかに、人は見た目ではないというのは綺麗事だと私も思います。
容姿で相手の反応が変わることは大いにあると思います。
自分のことを棚にあげて言ってしまえば、やっぱり接する人が綺麗な方が嬉しいというのが本音ですね。
それは雰囲気等も含めてのことなので、必ずしも見た目が整っていないとダメということではなくて、それが全てではないけれど、綺麗な方が有利なのは否めません。
私自身、田淵和子ほどのブスではないとしても、美人と言われたらお世辞であることは分かるというような、普通の美しくない人だと思います。
そんな感じで自分が特に美しくないせいか、表現にくどい部分があるせいか、この小説であまりに美人の素晴らしさを強調する場面が続いた辺りはしばしゲンナリしました。
それに、醜い姿だった田淵和子への周りの対応も、美しくなった後の和子の意地悪も、話としては気持ちのいいものではありませんでした。
けれども、それが現実だとも思いながら読みました。
とはいえ、紆余曲折ありながらも和子(未帆)の物語の最期は幸せだったのではないかと思います。
その後のエピローグは無くても良かったような…あまり後味の良いものではありませんでした。
変に方向づけをせず、ご想像にお任せしますで終われば良かったと思います。
そんな感じで、素直に面白いとは言えませんが、整形で見た目も中身も変わっていく和子の様子は興味深くてどんどん読み進められました。
全体的に厚みの割に読みやすく、読むのが速くない私が2人の子育ての合間にちょこちょこ読んでも1週間くらいで読み終えました。
映画も観てみたいです。